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元ファンドマネジャー【IFA佐々木のコラム.152】
「配当課税の見直し」は適切か?

COLUMN
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資産形成・豆知識152.

「配当課税の見直し」は適切か?

2021年末に、政権与党が「配当課税の見直し」に言及しました。

高額所得者の所得税率に対し、源泉分離課税になっている株式配当の課税率(税率20.315%)が低いことから、高額所得者の負担する税金が抑えられているのではないか、ということが発端のようです。

部分的には正しいのですが、株式配当は「二重課税」になっているため、投資全体をみると正しくありません。

議論を簡単にするため、1株1億円(発行株式総数1株)で投資した会社を考えます。

この会社が、1,400万円の年間利益(税引前)を上げたとします。

この会社の実効税率(法人税+法人事業+法人住民税)を30%とすると、利益にかかる税金は420万円です。

税金支払い後の利益980万円を全額配当として支払ったとします。
(注)議論を簡単にするために配当性向を100%とします。

すると、株主(この場合は1人の投資家)は980万円を配当として受け取り、配当にかかる税金199万円(税率20.315%)を支払い、手元には781万円が残ります。

この結果をまとめると、
・1億円を投資(会社を所有したことになります)
・会社は利益に対し、420万円を納税
・投資家(株主)は配当収入に対し、199万円を納税
・株主が手にした収益は781万円

つまり、1億円の投資で得た収益1,400万円のうち、合計納税額が619万円、手にした収益は781万円です。

投資収益1,400万円に占める支払い税率は44%(=619万円÷1,400万円)です。
つまり、収益を得た時には利益の44%を納税します。

そして、企業は収益を上げることができない場合もあります。
その時の投資家の収益はゼロです。

投資家は、大きなリスク(株式価値は低下、あるいは、ゼロになる場合があります。)を負っているにもかかわらず、現在の納税率(二重課税)は高いのかもしれません。

また、配当課税が引きあげられると、長期の投資家は減少し、短期売買での収益を狙う人が増えるのではないかと危惧されます。(売買収益(譲渡益)に対する課税は20.315%です。配当課税率が引きあがるのであれば、配当課税を避け短期売買による収益獲得狙いが増える可能性があります。)

佐々木幸喜(IFA佐々木へのお問い合わせは以下のフォームからお願い致します。)

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