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NEWS RELEASEニュースリリース

ペレグリン・ポートフォリオ・ウォッチ2024年9月号

MAILMAGAZINE
画像27 9月

Peregrine Portfolio Watch
2024年9月号 Vol.46

緩和への慢心と高すぎる期待

【2024年8月の振り返り】マーケット・コメント

8月初め、米国の金融業界の大物たちが夏の昼食会に集まり、先行きについて非公式のアンケートを取っていたそうです。結果は、過半の方が、米経済は「ソフトランディング(軟着陸)」する、1年後の金利は3~3.5%になる、株価は10%以内の変動となる(振れの方向は上昇と下落が半々に割れた)、といったごく平凡なもので、差し迫った市場暴落を予想した人は誰もいなかったそうです。言うまでもなく、海千山千のヘッジファンド幹部であれ、ウォール街の高給取りトレーダーであれ、ベテランのプライベートバンカーであれ、市場が暴落する正確なタイミングを予想することは不可能です。

確かに、経済状況や投資環境などにおけるひずみや亀裂、不安要素は指摘することができます。しかし、それがいつ、どれくらいの規模で、市場に地震を引き起こすかを判断するのは、現実の地質学と同じくらい難しいものでしょう。あとからみれば、「割高感の解消」、「積みあがったポジションの巻き戻し」など、もっともな要因を指摘することはできます。ただ、毎回繰り返されることですが、大事なことは、「常に市場に対して謙虚でいるべき」ということです。日々市場の動きを解説する立場にある人は、起こってしまった暴落に対して、もっともらしい理由を述べる必要がありますが、米市場が暴落したからといって、日経平均が過去最大の下落幅を記録したからといって、1日で世界の経済情勢や企業の事業活動、業績が変化したわけではないのです。まずは、アルゴリズム取引の台頭で、価格の変動率(ボラティリティ)と結果(変動)の増幅(フィードバックループ)が劇的に高まっている市場の構造を念頭に置いておくことが重要です。

とすると、8月初めの市場急落は、「実体」経済に対するバニックではなく、金融力学とでも呼ぶべき構造的現象であったと考えるほうが自然です。

いまに始まった話ではありませんが、2008年の世界的金融緩和傾向以来、世界の市場に溢れるマネーは増大を続け、その変動エネルギーの規模も増大してきました。蓄積されるエネルギーが大きくなるということは、些細なきっかけでも大きな変動になりやすいということです。

平常時、ボラティリティが低い時期は、増大するマネーによって巨大なポジションが積みあがります。しかしこのポジションは、期待通りの水準やタイミングが来た時、もしくは予想を外して損失回避の手じまいをするとき、いずれにせよいつかは解消されるものです。借り入れも含めて規模を膨らました投資(投機も含む)の縮小(一般的には暴落局面)は、あくまでも市場のイベント(事象)であって、経済的なイベントや変化ではない、というわけです。このような相場変動は大規模金融緩和の弊害であることは既知の事実であり、金融政策の変化から生じる余震のようなものとみなすことができます。

そもそも、長らく低金利での資金調達が可能だったゆえに、投資マネーを肥大化させていたことで生じた市場のゆがみを、いつのまにか正常とする見方が通常になっていた(思い込んでいた)ため、本来起こるべき変動を想定外の動きと捉えてしまう、という背景があります。日本でも、現物取引と先物取引の過半を占める高度なプログラム売買、超高速取引といった市場変動の増幅装置によって、低金利が異常な状況であったことを強烈に思い知らされたわけですが、今後も下落局面に遭遇した際には、取引における構造的な現象なのか、経済情勢に関わる現象なのか、落ち着いて判断することが必要です。

投資家にとって、上昇相場が続くような居心地の良い時は、強気という慢心が生じやすいですが、平常時にこそ突然の変動への備えも考えておく謙虚さが、長期的な資産運用においては重要だと、市場があらためて教えてくれた夏でした。

■ポートフォリオの状況について

当ポートフォリオは、7月12日に、基準価額が最高値の14,446円をつけた後、7月下旬の大手半導体企業の株価下落、円高への方向転換を受け、8月5日の世界的な大幅安を経て、基準価額は13,061円まで下落しました。この間の下落率は9.4%です。ちなみに同期間の日経平均株価の最大下落率は約26.5%、S&P500株価指数が約10.3%、ナスダック総合株価指数が約15.8%、そしてドル・円レートが約12.5%でした。

このように比較しますと、日本の日経平均株価の下落率が突出しますが、円ベースで考えますと、米国株価指数の下落も同程度に近い下落率となります。この間に米金利は低下傾向となったため、米国債等の債券価格は上昇傾向となり、当ポートフォリオで保有している米国超長期国債ETF(為替ヘッジあり)は約7%の上昇となりました。

令和のブラックマンデーとの呼び名がついた記録的な下落を経験した8月でしたが、当ポートフォリオとしては、前回号でも記載しました通り、まず7月下旬(25日)に日本株式のTOPIX連動型インデックスファンドを約1.5%、米国のナスダック総合株価指数連動型インデックスファンドを約1%、それぞれ追加投資を行っておりました。

そして、8月5日には、日本株式が大きく下落したことを受けて、TOPIX連動型インデックスファンドに約2.5%の追加投資を行いました。結果、日本株式の投資割合はこの時点で約13.5%となり、基本配分の10%を超過、月末に向けて日本株式が回復傾向となったため、8月末時点では14.7%となりました。一方でキャッシュ比率は20%へ低下、通常時の待機比率の下限に達しました。

引き続き、市場の投資環境の変化に応じて柔軟に対応する方針ですが、当面はキャッシュ比率の余力を再度確保することも念頭に、上昇局面では利益を確定するアクションも検討しつつ、機動的にポートフォリオの成長機会をとらえてまいります。

■ポートフォリオの基準価格推移(2019年12月~2024年8月31日)

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■2024年8月31日時点のアセットアロケーション

■組入れ資産の状況

■今後とポートフォリオについて

7月に発表された米国の雇用統計をきっかけに、米国の労働市場が悪化し、年内に合計1%以上の利下げに動くとの予測を金利先物市場が織り込んでいます。米連邦準備理事会の(FRB)のパウエル議長は、8月の経済シンポジウムで、「労働市場の悪化を止めるためにはなんでもする」といった趣旨の発言をしており、裏をかえせば、実体経済はそれほど悪いのかとの憶測を市場に与えた形で金利低下が進みました。これが急激な円高・ドル安や世界的な株価調整に繋がったことはご承知の通りです。ただ、この織り込みが「行き過ぎ」ではないかとの見方もあります。

市場は往々にして、先行きの不安や不透明要因などに対して過剰に反応する、余分に織り込む動きをみせますが、強すぎる利下げ期待に修正が加われば、再び相場の急変を起こしかねません。2024年9月3日時点の現状を確認しておきますが、米金利先物の値動きからFRBの政策金利動向を予想する「フェドウォッチ」によりますと、FRBが年末までに1%以上の利下げを行う確率は、8月末時点で約70%となっています。米国の金融政策を決定する米公開市場委員会(FOMC)の年内の予定は、9月中旬、11月上旬、12月中旬と残り3回です。年内に1%以上の利下げを行うとすれば、残り3回の会合で最低0.25%の利下げをしたうえで、どこか1回以上は0.5%の利下げを行うことを意味します。

つまり、労働市場の状況など、もし何か米国の経済動向がより悪化する数字の指標が出たら、0.5%の利下げに踏み切るかもしれないとの警戒感を強めていると考えられます。当のFRBによる直近の予想は、6月に公表した経済見通しに含まれたFOMC参加者の政策金利見通し(いわゆるドットチャート)ですが、その時は、年内は0.25%の1回の利下げが適切となっていました。これに対して、市場が大幅利下げを織り込むことになったきっかけが、8月2日に発表された7月の米雇用統計で、その内容が、経験則的に景気後退が始まった可能性が高いと読み取れるものだったことです。この、予想に反した結果が、急速な円高・ドル安、株価の記録的な下げにつながり、主要国でも株価の急落に波及しました。

もっとも、金融機関からは、織り込みが過度ではないかという指摘も多くあります。行き過ぎた利下げ期待は、長期金利の変動率を高めたり不安定化をもたらしたりする懸念を高めます。米バンク・オブ・アメリカは、「米国の経済活動は堅調でインフレ率もFRBの想定をわずかに上回る程度であるため、大規模な利下げの必要はない」として、年内の利下げは0.25%を2回と予想しています。

大方の見方は、「減速しつつも後退はしないだろう」というものですが、もちろん状況は変化します。注目点は、FRBのパウエル議長が労働市場を重視する姿勢を鮮明にしていることです。

今後を見据えて押さえておきたいことは、株式市場では「利下げ幅が縮むことよりも、米景気不安和らぐことの方が好感されるだろう」という考え方です。予想より雇用の悪化が進み、円高が進む、株式市場が二番底を探る展開も、今後もあり得ることとして想定しておくことが必要です。そして、もし景気後退に突入する事態になれば、FRBがどれほど利下げをしても、過去の歴史が示すように、雪崩のように崩れる株価の下落は止められないでしょう。

市場は常に上にも下にも大きく揺れる可能性があるものとして対峙することが肝要です。

■ポートフォリオの戦略的配分について

■ディスクレーマー(ご留意事項等)

本資料は、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として、ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社(以下、当社)が独自に作成したものです。特定の銘柄について投資勧誘を目的にしたものではありません。本資料で言及しました銘柄や投資アイデアは、投資に関するご経験や知識、財産の状況及び投資目的が異なるすべてのお客様に一律に適合するとは限りません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。本資料は、信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成したものですが、正確性及び完全性を保証するものではありません。万一、本資料に基づいてお客様が損害を被ったとしても、当社および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。また、本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製または販売等を行うことは固く禁じます。

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