NEWS RELEASEニュースリリース

【第4回】投機筋の役割

COLUMN
3f7ec916af4935f8174c045758672157_s

投機筋の役割

今回は、市場が乱高下した際によく名前がでてくる「投機筋」という存在について触れてみたいと思います。

第3回でお伝えしましたように、金融市場の参加者は大きく分けると実需筋と投機筋に分かれます。実需筋は実際にその証券を中長期で保有したい投資家で、市場の価格に方向性を与えます。為替市場であれば、輸出入企業は本業の支払いで為替取引をする必要がある実需筋です。

一方で日々の市場の動きに大きな影響を与える投機筋は、様々な投資手法を駆使しますが、実際にその証券を保有する必要はなく、買い戻しや売り戻しを前提とした短期売買による差益そのものが目的です。コンピューターを使って超高速取引など様々な投資手法を駆使するいわゆるヘッジファンドや日計りデイトレーダーなども投機筋です。

投機筋の役割についてはもしかするとあまり良いイメージをお持ちでない方が多いかもしれません。ただ、実需筋と投機筋が同じ場所で交わって市場という取引システムが成立していることは事実です。日本の株式市場を例にとっても取引の量では投機筋が過半を占めています。このように存在としては非常に大きい投機筋の役割とは一体どのようなものなのでしょうか。

もし、投機筋がいなければ市場はどのようになってしまうか、非常に簡単な例に置き換えて考えてみます。

あるところに、レモンを売買している市場があったとします。仮に月曜日には実需の買いが多く、火曜日には実需の売りが多いとします。その市場には実際にレモンを買いたい実需の人しかいないわけですから、月曜日はレモンを売りに出す人よりも買いたい人が上回ることでレモンの価格は高騰し、買えない人が残ってしまいます。しかし翌日には売りたい人が買いたい人を上回りましたのでレモンの価格は暴落し、最終的には売れない人が残ってしまいました。

この状態だと価格は非常に不安定で非連続的なものになり、取引市場として機能していると言えません。

しかしここで、実際にレモンが欲しいわけではないけれど、この市場に参入すると一儲けできるのではないかと考えた人(投機家)がやって来たとします。実は彼は別の市場でレモンを入手していました。

彼は月曜日にレモンを買えずに残った人へ「高値だが私が持っているレモンを売ってあげます」と申し出たとします。そして翌日、彼は売りたくても売れずにレモンを手元に残ってしまった方へこう言います。「安くなってしまったけどその価格でよければあなたのレモンを買い取ります」。

こうして別の市場でレモンを調達してやって来た投機家は、月曜日に高値である人にレモンを売り、火曜日に安値で別の人からレモンを買い(戻し)ました。こうして彼は売買差益を獲得しました。実際にレモンが欲しいわけではなく、市場の実需の取引の間に入って利益を得ようとする、これが投機筋です。

この取引を見た別の投機家たちが、次々と収益の機会を見出して市場に参入してきます。投機筋の数が増えるほどに収益幅は減りますが、実需で取引したい人たちにとってはより望ましい価格で取引がいつでもスムーズにできるようになります。これは、投機筋が市場に流動性をもたらしたということです。

このように投機筋は実需の投資家の相手となり、市場における取引価格の安定性と取引の利便性を供給しているといえます。さらに、市場がよりよいものになるとあらたな投資家や投機家を引き寄せることになり、市場は一層拡大していきます。

つまり投機筋は、リスクを取って市場に参加することで実需の偏りや歪みを和らげる役割をなし、市場の機能を支える重要な役割を担っているのです。

ニュース一覧に戻る