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【第9回】なぜ株価はゆっくりと山を描いた後に崖を作るのか

COLUMN
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なぜ株価はゆっくりと山を描いた後に崖を作るのか

株価が上がってきて多くの人がその銘柄に気付いた時、チャートを見てみます。すると、時間をかけて緩やかな尾瀬を歩いて登るようなゆっくりとした右肩上がりの曲線を描き、その上昇ピッチが速くなるとどんどん急角度で山が高くなる。そして頂きを作った後、チャートではその右側に崖のように急落する図が描かれることがあります。

「山高ければ谷深し」という格言も有名ですが、なぜ株価チャートが描く山はゆっくり上り、一気に下落して谷を作るのでしょうか。

まだ誰も注目していない状況で、投資家が買う動機にはしっかりとその企業を下調べした上で見えてくる根拠があります。企業の事業内容や業績、将来性や成長性、財務内容や経営状況を細かくチェックし、慎重に検討したうえでその株式を買います。しっかりと買う理由が存在しているのです。

ところが株価が上昇傾向を見せ始めると、動意付くと一般的に言われますが、その動きに多くの投資家が気づいて有望と見れば買いが集まってきます。解説をする立場の人が、「なぜ買いなのか」その理由を説明します。そしてさらに買いが増えて株価の上昇スピードは速くなってきます。すると、なぜ買いなのかを理由付けしていた割安感は薄れ、解説者は「なぜ上がったのか」「なぜ買われたのか」という解説に変わっていきます。

当初の買う理由は価格上昇によってその根拠が薄れてしまったにもかかわらず上昇していく動きを説明するには、「上がるから買う」「買うから上がる」という、買い手を引き付ける価格上昇への期待というものが使われます。その銘柄の魅力ではなく、活発な買い手を引き付けている価格の動きそのものが魅力に変化しているのです。その買い手は、上がるものは何でも良いから買うという人たち、すなわち投機家です。

同業他社や企業業績など株価を説明する根拠から大きく乖離して上昇した結果、本来割安で買おうとする投資家たちは自分たちの基準に照らして割高と判断し、売りに転じます。その売りを価格の動きだけを見て買った投機家は、いずれ買い上がる力を無くしてきます。そしてもう買えなくなったところで売りに転じると急落になってしまいます。これがチャートでは山の崖のように見えるのです。

なぜこのような形がチャートの上で時々現れるのでしょうか。それは、長期資金を運用する投資家はしっかりした買う理由を持って株価が落ち着いている時にゆっくりと仕込みますが、投機家はスピード勝負です。株価の安定期ではなく波乱のタイミングに乗ります。しかも空売りが使えます。投機筋は上昇局面で思い切って飛び乗り、下落局面では一斉に飛び降ります。このため、チャート上ではゆっくりと昇る山が頂上に向けて急角度になり、頂きを超えた右側で崖を作ってしまうことがあるのです。

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