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【第3回】価格を動かす力

COLUMN
お金の力

価格を動かす力

上昇相場で順調に上がってきた株価がある日大きく下がってしまった。弱気なニュースを見て空売りしたところ、その銘柄に空売りが増えてじりじり値下がりしてきたところで急反発してしまった。株式投資をする際に損が出てしまうよくあるパターンの一つです。

「空売り」している状態を「ショートポジション」と呼びますが、これは必ず将来買い戻す必要がある状態です。空売りをする人は通常これから値下がりを見込んだ弱気な見方をしているのですが、空売りが増えるということは、実は市場は彼らの思惑とは逆に、市場では将来の上昇要因を持つことになります。

一方で、ある商品を持っていた人が売りを出した場合は、それを買った人が将来どこかで売ってキャッシュに戻す売り圧力が市場に発生するため、市場では将来の下落要因を持つことになります。

これらの上昇・下落要因を力関係に置き換えますと、取引額の大きさ(金額)と、保有期間の長さで考えることができます。

市場での取引の原理は、「買ったらいずれ売る」、「空売りしたらいずれ買い戻す」というものです。利益または損失を確定するにはキャッシュに戻す必要があります。その取引の力関係は、金額と保有期間の長さです。市場の参加者には、取引金額は大きいけれど一日の終わりにはすべての取引を閉じてキャッシュに戻さなければならない人もいれば、金額はさほどでなくても保有期間に制限がない人もいます。値下がりしているが損切をせずもう少し粘ってみるということは、保有期間を長くするということです。

金額の大きさと保有期間という観点で考えると、いわゆる短期筋の取引は、上昇を見込んで買いを入れた瞬間から市場に目先の下落要因を内在させるという矛盾を生みます。この額が大きくなるほどにその時の価格は上昇するかもしれませんが、同時に近い将来大きな下落が起こる可能性も上昇します。逆も然りです。

このように日々の短期的な価格変動は、主に短期筋の巨額の取引によるところが大きいと言えます。何らかの材料で売買された取引は必ず反対売買で閉じられます。目先の動きを予測しようとすることは、いわゆる投機筋の取引の動きを読み取ろうとすることと同じと言えるかもしれません。

では、価格変動の方向性、トレンドと言える中長期的な動きに対してはどうでしょうか。これには長期で保有できる参加者の動きが大きく影響してきます。例えば投資信託の運用資金や個人投資家が考えられます。もっと強力なのは、超長期の投資家、実需の投資家です。企業や金融機関が保有する株式、年金資金などを運用するファンド、そしてアベノミクスでの2013年以降の上昇相場を支えた日銀による指数連動型上場投資信託受益権(ETF)買い入れをイメージすると分かりやすいでしょう。

2015年から2016年にかけて原油価格が大きく下落し、同時に日本の株価も大きく落ち込む時期がありましたが、この時は中東のオイルマネーが資金化のために日本株を売却していたと言われています。これは長期の巨額の買いポジションがやむなく売りで閉じられ、その資金が市場から引き上げられたという意味で大きな下落トレンドを作ったと言えます。

このように、相場の動きを予測することは決して簡単なことではないですが、市場の参加者の動きを金額と保有期間で考えてみると、自分なりの仮説を立てやすくなるのではないでしょうか。

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