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元ファンドマネジャー【IFA佐々木のコラム㉝】
効率的経営を目指すと株価変動性は高まる?

COLUMN
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資産形成・豆知識33.
(資産運用をこれから始める時に知っておくべきこと)

効率的経営を目指すと株価変動性は高まる?

一般的に「効率的」とは、無駄がない、あるいは、少ない労力でより多くの成果を上げることをいいます。

金融の観点での「効率的経営」とは、株主資本(出資と利益の集積)と負債(借入、借金)の比率をコントロールし、リスク対比で、より多くの利益を上げることをいいます。
つまり、負債(借入、借金)を上手に利用し、企業の収益(=株主の利益)を効率的に上げられれば、効率的経営といえます。
これがなぜ株価変動性を高めるのでしょうか?の

負債が「ない企業」と、「ある企業」を比較すれば一目瞭然です。
(簡便化のため、同じ企業が負債比率ある/なし、で比較します。また、負債は全て事業規模拡大のために投資すると仮定します。)

◎負債がない企業の収益構造
 株主資本:100
 企業損益のブレがプラス10%~マイナス10%であるとすると、
 株主資本に対する利益はプラス10%~マイナス10%で変化します。

◎負債を100にして経営した場合
 株主資本:100
 負債:100 (借入金利を1%と仮定します)

この企業は、借入金(負債)を使って事業規模を2倍にし、企業活動を行うと仮定します。

すると、企業収益は、
(株主資本を使った事業損益)+(負債を使った事業損益)-借入金利息、となり
株主資本に対する利益は、プラス19%~マイナス21%で変化します。

収益の場合だけに注目すると、負債が100の場合には、株主資本に対する利益が19%(負債がない場合は10%)になるので、効率的に収益を上げたことになります。
それに対し損失の場合に注目すると、負債が100の場合には、株主資本に対する利益がマイナス21%(負債がない場合はマイナス10%)になるので、損失を拡大させたことになります。

つまり、負債を利用した経営を効率経営とよべるのは、収益が得られる場合に限るということです。
(ただし、企業経営は収益の獲得を前提としているので、負債の活用は常に「効率的経営」にあたるのかもしれません。)

株主資本に対する利益は、株式の銘柄分析をする場合に使う指標(ROE:株主資本利益率)であり、上記の例では、下記の通りとなります。

負債がない場合のROE=プラス10%~マイナス10%
負債が100の場合のROE=プラス19%~マイナス21%

負債を利用した経営は、通常、事業収益のブレを大きくします。

つまり、負債を利用している企業の株価は、通常、価格変動性が高くなります。
これは、米国型経営に通じるところがあります。
低金利の状況下、現在ポピュラーなのは、下記のように負債で自社株買いを行うものです。

・債券を発行し、
・債券発行で調達した資金で自社株を買いし、(株式発行数が減る)
・一株益を引きあげ、
・株式価値を高める

「債券発行による自社株買い」は、株主資本の一部を負債に置き換えることにより「効率的経営」を目指していますが、同時に、負債と企業収益の変動性が増加するという点において、事業リスクが増加していることになります。

 

佐々木幸喜(IFA佐々木へのお問い合わせは以下のフォームからお願い致します。)
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