元ファンドマネジャー【IFA佐々木のコラム.133】
コール・オプション取引が株式市場に与える影響
資産形成・豆知識133.
コール・オプション取引が株式市場に与える影響
2021年11月5日の日経新聞電子版に興味深い記事が載っていました。
ある会社(「T社」とします)の株価上昇の背景には、株式オプション取引があるとの記事です。
「米ダウ・ジョーンズ通信は10月25~27日の「T社」株のオプション売買高は9000億ドル余りと現物株の約5倍に達したと伝えた。」とのことです。
なぜ、これが株価上昇をもたらすのでしょうか?
ポイントは、一般投資家がコール・オプションの買い手で、コール・オプションの売り手がプロであることです。
コール・オプションは、事前に定めた株価で株を買う権利です。
例えば、「T社」の株価が$100の時に、$500で買う権利を一般投資家が買うとします。
権利行使が難しいと思われる株価に行使価格を設定しているので、このコール・オプションは安い値段で購入することができます。(例えば、$1。なお、行使価格や権利行使ができるまでの期間等によって値段は変化します。)
しかし、株価が上昇し権利行使の可能性が高まってくると、売り手のプロは権利行使に備え、ある程度の「T社」株を購入する必要があります(権利行使されると、コール・オプションの売り手は買い手に株を渡さなければいけません。)
株価が$500になると理論的には、コール・オプションの半分程度の「T社」株を事前に購入し、権利行使に備える必要があります。
株価が上昇するにつれ権利行使の確率が高まるため、売り手のプロは、さらに「T社」株を購入し権利行使に備える必要が出てきます。このようにして、株価の上昇が加速されます。
逆に、上昇した株価が下落し、権利行使の確率が下がると、プロの売り手は権利行使に備えて買っていた株の一部を売却します。この時には、株価の下落が加速されます。
オプション売買高が現物株より多い銘柄は株価の変動が大きくなる可能性があります。
リスク管理のためにはオプション売買高に注意する必要があるかもしれません。
佐々木幸喜(IFA佐々木へのお問い合わせは以下のフォームからお願い致します。)