元ファンドマネジャー【IFA佐々木のコラム⑬】
時価35兆円の株式はどのように売却するのか?
資産形成・豆知識13.
考えるには早すぎるかもしれませんが・・・・
時価35兆円の株式はどのように売却するのか?
日本銀行は、黒田日銀総裁になってから、デフレ脱却のためにインフレ目標を定め量的緩和を続けています。インフレ目標実現の手法の一つとして、日銀は株式を購入し続けており、その結果、保有する株式の簿価は約30兆円(注)(時価は、昨年の金融委員会で約35兆円と答弁されています)に達しています。
(注)日銀の営業毎旬報告で公表されています。営業毎旬報告(令和2年1月20日現在)
未だ、掲げているインフレ目標に達していないことから、今後も日銀は株式を購入(年間購入額は6兆円を目途にしています。)し続けることにしており、売却(出口戦略)を論じる段階ではありませんが、35兆円の株式売却のインパクト及び今後の出口戦略案について、今のうちに考えておくことも大切でしょう。
35兆円の株式売却のインパクト
日本の株式市場の時価は約650兆円で、一日の売買代金は約2兆円です。一人の投資家が、市場で市場に大きなインパクトを与えず売買できる金額は、一日の売買代金の5%程度といわれていることから、1,000億円が一日の売却金額の目途になると思われます。
仮に、毎日1,000億円を売却するのであれば、350営業日(1年5カ月)かかります。
とはいっても、“日銀が株式を売却している”との観測が出れば、株価は大きな下落を免れ得ないでしょう。もしかすると、日銀は大きな売却損を抱えることになるかもしれません。(日銀保有株式の平均時価は、1万9,000円台であるとの答弁が、昨年の金融委員会でなされています)
売却損が大きくなると、通貨の信認に影響(日銀が大きな赤字を背負うことになると、通貨の信用度が落ちることにより、円安及び輸入インフレが発生する可能性があります)するので、日銀が直接、売却することは考えづらいところです。
いろいろな出口戦略案が検討されていると思いますが、考えうる案の一つは清算事業団方式です。
●清算事業団に株式を移し、10~15年で売却?
日銀が自ら、日々、売却し続けると、様々な問題を引き起こしかねないので、日銀が保有する株式を清算事業団に移管し、清算事業団が10~15年といった期間を設定し売却せざるを得ないのではないでしょうか?
清算事業団は債券(35兆円超。政府保証が望ましい)を発行し、資金の調達後、その資金を使い日銀保有の株式を移管し、清算事業団が資金の回収(株式の売却)を担うのではないでしょうか?
しかし、どのような方法であれ、日銀が量的緩和終了(インフレ目標の達成)を宣言した時から、株式市場は売り圧力にさらされます。このような事態が近づいた際には、
◎日銀保有の株式銘柄購入はできるだけ避ける(日銀保有株価の上昇幅及び上昇スピードは、小さくなる可能性がある。)
◎株式投資をする場合には、(日銀が株式を保有していない)新興企業を主にする
◎主として、インカムゲイン(配当や分配金の獲得)を目指す。
等が考えられます。
いつになるのかはわかりませんが、いずれは必ず起きます。その時に備え、頭の片隅に留めておいていただければと思います。
なお、どのような方法で株式を売却するにせよ、損失が出ればその損失は国民が負うことになると思われます。
佐々木幸喜(IFA佐々木へのお問い合わせは以下のフォームからお願い致します。)https://peregrine.co.jp/contact/